拝啓 温暖の地として知られる静岡ですが、さすがに正月に入ってからは厳しい寒さが続き、吟醸造りにはもってこいと喜んでおります。皆様、今年のお正月はいかがお過ごしでしょうか。
さて、正月といえば初詣。今年も会社と蔵人を代表して家内と二人で京都の松尾大社に参拝してまいりました。3日の朝、蔵で杜氏と打ち合わせ終了後、大急ぎで静岡発9:14のひかりに乗り込むと10:43には京都駅に着き、そのままタクシーで松尾大社にしました。京都市の中心部はまだ閑散としておりましたが、松尾大社に近づくにつれて渋滞してきました。ここから先は歩いたほうが早いですよとの運転手さんの勧めに従い、松尾橋の途中で車を降り、歩いて桂川を渡りました。その先、阪急嵐山線の踏み切りを渡って大鳥居をくぐればもう神社の境内です。参道の両側に昔懐かしい屋台がずらりと軒を並べ、参道は行き帰りの参拝客で混み合っております。たこ焼きかイカ焼きを肴にちょっと一杯という誘惑にかられましたが、ぐっと我慢して先へ進みます。せっかく
京都まで来たのですから特別ご祈祷をお願いするのです。受付で申込書に「醸造祈願、商売繁盛 清酒 臥龍梅」と書き込んでご祈祷料を納め、控えの間で待つこと暫し、やがて権禰宜さんに名前を呼ばれて他の氏子の皆さんと一緒に奥の神殿に向かいました。外の喧騒はどこへいったものやら、神殿の前は凛とした厳かな雰囲気に充ちております。巫女さんの踊りの後、何とお呼びすればよろしいのか、一段と位の高い神職の方が神殿の正面に向かって祝詞を上げ、一人ずつ順番にご祈祷してくださいました。不心得者の私も、このときばかりは神妙に正座して頭を垂れておりました。その後、お下がりを頂戴し、別室で直会(なおらい)の盃を頂いてご祈祷は無事終了です。これで今年も必ずや美味しいお酒ができることと思います。
今月から蔵人を一人ずつ紹介してゆくことにいたします。トップバッターはもちろん杜氏の菅原富男さん。(ご出身は?) 岩手県花巻市石鳥谷町です。(いわずと知れた南部杜氏の本拠地ですね。お生まれは?) 昭和18年ですので今年64歳になります。(酒造歴は?) 昭和36年にこの道に入りましたので今年で46年です。(杜氏歴は?) 今年でちょうど30年です。(夏場、岩手ではどんな仕事をされていますか?) 米作りのほか、植木の剪定等、庭師の仕事をしております。生き物の世話をする細やかな仕事で酒造りにも共通するところがあります。(趣味は?) 特別にありませんが、酒を楽しく飲むのが好きですのでカラオケに行ったりします。(酒造りについて思うことは?) 毎年、毎年、一年ずつが勝負ですので、そのたびに初心に帰って真摯な気持ちで取り組んでいます。(今年の抱負は?) まずは自身の健康を維持すること。それから皆さんに喜ん
で飲んでいただける酒を造りたいと思っております。(ご愛飲家の皆様へのメッセージは?) お酒は楽しく飲むもの。私の造った「臥龍梅」は楽しく、気持ちよく飲んでいただきたいものです。(野武士のような精悍な風貌に似合わぬ、蔵人思いのやさしい杜氏さんでした。)
今月は、「短渡船稈」を用いた純米吟醸酒をご案内いたします。半世紀ぶりに復刻した幻の酒造好適米で醸したお酒を是非ともご堪能ください。
寒さのおりから、おかぜなど召しませぬように。                敬具
平成二十年一月吉日                           鈴木克昌
 

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