『臥龍梅』 蔵便り   平成十六年弥生

拝啓 早春の候、寒気もしだいにゆるみ、「臥龍梅」もようやく白い小さな蕾をほころばせようとしております。皆様お元気でお過ごしでしょうか。

先日、出張で滋賀県まで行ってまいりました。気が早いとお思いかもしれませんが、来年の酒造好適米の用件です。これまで、当社に限らずほとんどの酒造会社は各県の酒造組合を通じて生産県の経済連から原料米を購入してきました。ただ、こうした購入方法では生産者の顔が見えませんし、まして生産者との対話も生まれません。良い酒ができるかどうかは原料米の出来次第で大きく変わってきます。できるものなら、毎年信頼のおける同じ農家に、当社の「臥龍梅」という酒を造るためのお米として心をこめて栽培してもらいたいものです。そこで、当社では「JAグリーン近江」の紹介で近江八幡市の農家の藤本さんに今年から酒造好適米を栽培してもらうことにしました。田んぼは琵琶湖畔の広大な水田地帯の一角にあり、1ブロックが後楽園ドーム一個分もあります。それもそのはず、この地域は琵琶湖最大の内湖である「大中の湖 だいなかのこ」を干拓してできた農地なのです。
また、米作のかたわら「近江牛」を育て、その堆肥を有機肥料として使用しており、「環境こだわり農産物」の認証を滋賀県からもらっています。もちろん、ここで調達するのは原料米のごく一部ですが、今後も積極的に新しい試みに取り組んでゆくつもりです。
ところで、「JAグリーン近江」でとても興味深い話を聞きました。滋賀県原産の「短かん渡舟 たんかんわたりぶね」なる幻の酒造好適米を父方に、岡山県の「備前雄町」を母方に交配してできたのが兵庫県の「山田錦」なのだそうです。

さて、今月はいよいよ兵庫県産山田錦40%精米の「大吟醸無濾過生原酒40」、冷やでももちろん美味しく飲めますが燗上がりする生原酒「純米吟醸無濾過生原酒 備前雄町」、さらにお待ちかね「純米吟醸袋吊り雫酒 兵庫山田錦」をご案内いたします。どれも素晴らしい出来です。是非ともお試しください。


天も地も躍動の季節です。皆様のご健康とご活躍をお祈り申し上げます。          敬具

平成16年3月吉日                                 鈴木克昌

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